あれは、30代半ばのこと。7年くらいしていたデザインの仕事をやめて全くやったことがない仕事をしてみたいと思っていた。辞めてすぐおしゃれカフェの調理の仕事をしたけど人間関係&腱鞘炎ですぐ辞めてしまった。でも、諦めきれず、もう一つ行って見ようと思い、おしゃれカフェとは打って変わって
おばちゃんばかりのお惣菜屋さんに入社した。
店長は、極妻に出てきそうな強面。バリバリの元ヤン臭がすごい。動きが遅いと言って冷蔵庫で胸ぐら掴まれたこともあった。私は体育会系ではないし、内勤のデスクに座ってパソコンを触るような仕事しかして来なかったので衝撃だった。怖いの通り越してもう舎弟に徹していた。
そんなある日、まためちゃくちゃ怒鳴られた。お惣菜が出来上がって表に並べる時、◯○出来上がりました。「いかがでしょうかー」って商品出す人が言ったら他のみんなも同じように「いかがでしょうかー」と言わないといけない。その声が小さかったようで、
店長に「声小さいんやおまえーーーー!!!!声はれーーーーー!!!」
私「すみません!!」
次の出来立て商品が出る時には、もう心臓バクバク。失敗は許されない。
なんとか、お昼休憩までは注意されずに大きい声で「いかがでしょうかー」と言い続けた。
そしてやっと休憩。勤めている惣菜屋の隣のパン屋さんでランチ。
午前中にあったこととか思い出して。はーってため息が出る。
パン屋さんでも、うちと同じように「○○焼き上がりました。いかがでしょうかー」って女の子が言った。
座ってパンを食べていた私。
反射的に・・・
「いかがでしょうかー」・・・
ってめちゃくちゃ大きな声で。客なのに。
隣の席の人は、瞳孔開いて私をみている。店員さんはパンを持ったまま怯えた目で私をみている。
みんな見てる。
何秒か気づかなかった。うわっ私、「いかがでしょうかー」て客やのに言ってもうた。
やってもうた・・・食べかけのパンを持ってダッシュで店を出た。(事前精算済です。)
今までで一番いい声出たけど、自分が隣の席の人やったら、無茶くちゃ怖い。
客がいきなり大声で「いかがでしょうかー」て。
結構好きなパン屋だったんだけど、それ以来行くことはなかった・・・