36歳の春、私は骨折していた。
36にもなるのに、まだ結婚してないどころか彼氏もいなかった私。でも好きな人はいた。同じ職場の子だ。8つも年下。仲が良くて、毎週末のように一緒に遊びに行った。でも、完全なる友達の関係。笑いのセンスというかツボが一緒で一緒にいて本当に楽しかった。
完全に友達としてやってきたので、告白する時は私が会社辞めるか、むこうが異動になる時と決めていた。でも、それは同時にやってきた。私が辞めるタイミングで彼も東京に異動が決まった。彼が東京に行ってしまう前に、思いを伝えなくては・・でも言葉で言うのはものすごく勇気がいる。ただの友達としてずっとやってきたから。
迷った挙句、私は手紙を書いた。全くまとまらず、気が付いたら尋常じゃない枚数の手紙を書いていた。もう便箋がなくなり裏にも書いた。どれがどのページの続きなのか、訳わからなくなった。考えた結果、手紙に番号をふり(14)の続きは、(1)の裏ですとか・・付け加えた。ものすごく複雑でわかりにくい。でももう書き直す気力もないし、便箋もない。14枚の便箋は、どう折ってもかわいい封筒には入らない。事務用の茶封筒に入れた。
内容は、初めの何枚かは告白。友達として遊んでるうちにいつの間にか好きになっていた。こんなに気が合う人は、この先も現れないと思う。結婚したいと思うくらい好きだと思うとかそんな内容だったと思う。なんか、もう恥ずかしいの極み。絶対直接こんなこと言えない。
あとは、ほぼ悪口。書き出したら愛の告白よりそっちの方が止まらなかった。あの時、むかついたとか。会社の近くの席の子とイチャイチャしてアホかなと思ったとか。でも結局全部嫉妬で、本当こんな感情になる自分が嫌になるとか。散々悪口書いた後、詫びさせてくれとか。
もう情緒不安定すぎる手紙。
告白→彼の悪口→侘び入れさせてください→好きです。付き合って欲しい。
今思えば、怖い。怖すぎる。こんな告白の手紙もらったらドン引き。この内容で14枚の手紙は、通報レベル。
その時は、いたって真剣。もう告白するついでに全部思ったこと書いたし、もうこのまま渡そう。
彼が東京に行く前日、呼び出して事務用の茶封筒に入った14枚の手紙を渡した。
ギブスをして松葉杖の私を見てびっくりしていた。
彼「大丈夫ですか?足。送別会で足の指折ったらしいですね。なんかもう酔い方酷かったらしいですね。」
私「う、うん。大丈夫、大丈夫」
告白の手紙だともいう勇気なくて、
私「これ餞別の手紙。絶対に飛行機に乗ってから読んでな!絶対に飛行機に乗るまでは読んだらダメやで」
彼「はい。ようわからんけど。わかりました。ありがとうございます。」
そうして彼は東京へ旅立って行った。
つづく