祖父のお葬式の時の話。
もう何十年もあってなかった親戚たちが揃った。知らないおばあさんにマユちゃん?まあ大きくなってと言われるが誰かわからない。大きくどころか、もう中年だ。体型のことを言ってるのかな?いろんな人に赤ちゃんの頃よく抱っこしたとか思い出話をされるがよくわからない人もいっぱい。
うちの親戚は名前で呼ぶというよりも地名で呼ばれている人が多い。
ケロクのじいさん、川奥のおばさん、ますずのばあさん……など。でもなぜか、阿波のおばさんだけは、阿波のオバハンって呼ばれてた。他の人は○○のオバサンなのに。法則がよくわからない。
なんとなく周りの人と軽い挨拶を交わし終わったころ、葬儀が始まった。
喪主は長男である父だった。まずは喪主の挨拶だ。なんかめちゃくちゃ緊張している。紙を持つ手が震えてる。
え~本日は~本日は~
ご多用の中、故人ヒデアキの葬儀に参列いただきましてー
え?会場がざわつきはじめた。故人である祖父はヒデノリだ。
ヒデアキとは、私の兄の名前。父は全く気づいてない。何度か故人ヒデアキと兄の名前を言った。
※祖父(故人):ヒデノリ ※兄:ヒデアキ
兄が横で「俺死んでないけど……」といった。
私は耐えきれなくなり「ぷーーーーーーーーーーーっ」と吹いてしまった。
マズいっと思い、咳でごまかした。横の列みんな笑いを堪えるに必死だ。前列の親戚も肩を震わせて笑いを堪えている。誤魔化すためか、あちこちで咳払いが聞こえた。近しい親戚は、みんな『年末の笑ってはいけない』状態だった。
もう、お父さんいい加減にしてくれ。
挨拶が終わった後、周りから小さい声でみんなにツッコミを入れられていた。
自分の親と息子の名前を間違うか?しかも絶対に間違ってはいけないところだ。故人って。
ほんと情けない……
葬儀が終わり、火葬場に移動。
本当にもう祖父の姿形がなくなってしまうんだなと思ったら、すごく悲しくて涙が止まらなくなった。
葬儀の時は泣かなかったのに姿形がなくなってしまうということに急に喪失感を覚えた。
厳しくも優しい祖父だった。子供の頃はちょっと怖かったけど、たまに見せる笑顔がすごく好きだった。
火葬が終わり、遺骨になって出てきた。もうほんとにいなくなったんだな。寂しいなぁ。
次は遺骨を箸で拾って骨壷に納める収骨だ。順番に箸で壺に入れる。私の番がきた。涙を堪えながら箸で掴んで壺に入れた。すぐに崩れてしまいそうで丁寧に入れた。ありがとう。今まで。
叔父のマサユキさんの番が来た。箸で掴んで入れる途中で骨を落とした。地面に。骨が粉々になった。
周りから、何やってるんや~マサユキは!呆れるような声で叔父はちょっと怒られた。
私は、ちょっと笑いそうになった。
人が少なく、もう一度マサユキさんの番がまわってきた。
一番最後の喉仏。これは一番関係が深い人が納めるのでは??
でも、マサユキさんは箸をとった。
先ほどの失敗を挽回をするチャンスだと言わんばかりに。
そして遺骨の喉仏を箸で掴んだ。
そして……
また落とした。今度は箸も落とした。
一番上に乗せる一番大切な部分。喉仏も粉々にした。
静まり返った後、「ぷーーーーーーーーーーーっ」誰かが吹いた。
私もつられて吹いた。その後、火葬場にいた全員がもう大爆笑していた。
そして「マサユキ~!!!お前~!!ええ加減にせえよ……ぷ、ぷ、ぷ」(笑)
もう笑いすぎて誰も注意できなかった。
「ごめんごめん!すんません。緊張してもうて。ほんま申し訳ない。」とマサユキさん。これ以上ないくらい申し訳なさそうにしている。悪気はないのだ。
そしてマサユキさんは、下に落ちた粉々になった骨を手でかき集めて入れようとして係の人に制されていた。
火葬場で大爆笑とか不謹慎なんだろうけど、じいちゃんが見ていたとしたら、ずっと辛い顔してるよりも最後は笑顔を見れた方が嬉しいんじゃないかな。
じいちゃん「マサユキ!おまえは、ほんまに~(笑)」って怒りながらも笑ってそう。
不謹慎な弔いだったかもしれないけど、最後みんなの笑顔で送り出せてよかった。かな