下ぶくれ日記

中年主婦が書くたわいもないブログです。

【昔の思い出】大阪の男② 〜地獄のドライブ〜

 

mayu-log.hatenablog.com

 

 

レンタカーを借りてさあ、さあ出発。

なんか運転ぎこちないけど、まあ普段乗らないならしょうがない。

 

 

『カフェでランチ。あまり盛り上がらない』

まずは、ランチ。ちょっと小洒落たカフェっぽい店だ。駐車場に車を停める。片側しか車停まってないのにめちゃくちゃ切り返す。前身してはバックしてを繰り返して、ミラー確認のみならず車のドアを開けて後方確認。まあ、慎重なのはいいことだ。

 

店内にはおしゃれな女子たちがいっぱい。私たちは明らかに浮いていた。彼は大柄だけど少量のかわいいランチセットで満足していた。意外と少食らしい。(がたい的には、見取り図の盛山みたいな感じだ)特に大した盛り上がりもなくカフェで食事を済ませた。昼間、しらふの状態で会ったらこんなにも盛り上がらないのか…

 

 

『ホームセンターで縁石乗り上げ』

彼はDIYにハマっているらしく、大型のホームセンターにも寄った。広くて何でも揃ってるんだけど、私は全く興味がなかったので楽しくない。この木がいいとか……このフックが使えるとか、工具の説明とか。目を輝かせてしゃべっていたので本当に好きなんだなと言うことはよく伝わった。私は、説明されるたびに「ふ〜ん」とか「へぇ〜」とかしか応えようがなかった。つまらない……

 

ホームセンターを出る時に、スロープになってないところの縁石に乗り上げそのまま、ゴットンと前進して降りた。ゴットン。ゴトゴト。ウォオォーン。車が上下に激しく揺れた。めっちゃ怖い。オフロードの四駆に乗ってるみたいだ。確かこの車は普通のカローラだったと思う。「ごめんごめーん」と彼はおどけて笑ってたが、私は笑わなかった。

 

海遊館で手繋ぎ拒否』

その後、店を出て今度は海遊館に向かう。危なっかしい運転で酔いそうになりながら何とかついた。本当のカップル同士とかだったら盛り上がるんだろうけど、もう全くドキドキもしないし、早く帰りたいとすら思いながら水槽の魚たちを何となく流し見して出た。途中、カップルに触発されて手を繋ごうとして来たが「汗めっちゃかいてるから無理やわ〜」と言って、汗もかいてない手をポケットに隠した。前に友達と来たことがあってすごく良かったから楽しみにしてたんだけど、来る人によっては全然楽しめない。

 

「疲れた?」と聞いてきたので「うん、ごめんちょっと疲れたかな。ちょっと体調があんまり良くないみたい」と私は言った。早く切り上げるために。

 

「そっかー大丈夫?そしたら京都の東寺行ってから帰ろか?」

 

はい??? 話聞いてた? 体調悪いって言ったよな私?大阪遊びにきたのに、今から京都行くん?もう海遊館行ったし十分じゃない?もうええって。ほんまに。

 

「ここから東寺遠くない?またにしよ。」またはないけど……

 

「いや、近い近い。車やし。せっかくこっちまで来てんねんから」

 

色々連れてってくれようと思う気持ちはありがたいが、ありがた迷惑だ。詰め込み過ぎやって。譲る気配は全くなかったので、結局京都に行くことになった。ナビを入れていざ出発。

 

 

『京都へ。もう前に進むしかないねん』

ナビが◯◯メートル先を右ですと言ったが、曲がりそびれてしまった。なかなかUターンできるところがなく真っ直ぐ進んで行く。途中で違うルートを案内しはじめた。「左へ曲がります」とナビが言った。言ったけどこんな細い道大丈夫か?

 

「この道、細いし行き止まりになってそうやで。バックして元の道戻ろうよ。対向車来ても避けれんし。広い道から行こ!」と私は提案したが「ナビが言ってるから間違いない。ナビ通り行ったら間違いないから。」と突き進んだ。これは私道ではないのか?狭すぎる。両脇に民家があり、手入れされていない木の枝が、道路まで伸びていた。シャッシャッシャッシャッ……木の枝や葉っぱが思いっきり車体に当たってる。壁にもちょっと擦ったで!

「擦ってる!車擦ってるって!車体傷付いたんちゃうん?やばいでやばいで!」私はパニックになった。

 

 



横を見ると彼は両手でギュッとハンドルを握りしめて、必死な形相をしていた。汗がすごい。

 

「わかってるけど、狭いから避けられへんねん。もう前に進むしかないねん。」

 

「もう前に進むしかないねんっ」てセリフはかっこいいけど、今めちゃくちゃダサい状況だ。

 

 



もっと進むと民家がなくなり、道路の方に向かって雑草がぼうぼうに生えている。バサバサバサッーシャッシャッシャッシャッ……太めのゴツい枝にサイドミラーが当たってメキっという音がした。もう、車体ボッロボロだ。終わった。

 

これは道なき道を走れるオフロードの四駆ではない。レンタカーのカローラだ。レンタカーなのに……

 

三叉路が見えてきた。やっとこの道から脱出できる。「左へ曲がります」ナビが言った。左折する時にちょっと車体が傾いた。「やばっ!」と彼が言った。細い溝があったみたいで脱輪しかけだった。エンジンをふかして、どうにか元の体制に戻せた。その時ばかりは2人で目を合わせて「はあ、良かった〜」とハモった。もう一度慎重にハンドルを切って左折できた。

 

はぁ〜もうどんだけだよ。どんだけ運転下手なんや。よく免許取れたな。もう免許返せっ!返納しろっ!

 

なんか車がカラカラいってる。どこから出ている音なのかもうわからない。考えたくもない。

 

 

『なんということでしょう』

やっと広い道に出て、京都に向かって走る。変な道を通ってものすごく遠回りしたので、日が暮れてきた。京都の着いたころにはもう暗くなっていた。なんということだ。東寺はもう閉まってた。何しにきたんだ?一体ここ来るまでに何時間かかったんだろう。もう疲れた疲れ果てた。帰らせてくれ。

 

彼も疲れ果てていた。駐車場で自販機の缶コーヒーを飲んで、一息ついた。そして車の様子を見た。「やってもうたな。」「やってもうてんな。」外灯の明かりで見える限りでも、車体の傷は明らかだった。ミラーの付け根部分にもひびが入っている。明るいところで見るともっとあるだろう。一体、修理費どんだけ取られるんだろう。

 

もう帰ろうと私が言った。さすがに彼もそうしよう……と。また大阪まで長時間ドライブに付き合うの絶対嫌だ。私はちょうどいい時間の新幹線があるからといって京都駅で降ろしてもらった。

 

 

『帰り道。修理費について考える』

新幹線の中で、いろいろ考えた。レンタカー返しに行ったかなあ。どんだけ請求されるんだろう。レンタカーの人びっくりやろな〜。あんなボッコボコで車返ってきたら……10万以上いるんかな?請求額聞いて、半分出した方がいいかな〜?でも自分で車運転したいって言って、車借りて、ナビ信じすぎて、木や壁で車体やミラー擦って、脱輪しかけて、京都着いたら目的の東寺閉まってて……私も相当散々な目に遭ってるし。自分のせいやーん!うーん…でも一緒に出かけたわけやし……考えるのも疲れた。もういいか。こっちから言わなくて。

 

翌日、彼から連絡がきた。レンタカーの人やっぱりびっくりしてたらしい。そりゃそうだ。修理費はまだわからないけど見積り中らしい。5万以上はかかると思うって。あれで5万で済むのか?もっといるやろ?請求されても困るので、「そっかそっかーでも2人とも怪我なくて良かったよな〜」と流した。

 

 

それ以降、特に連絡を取り合うとこはなく終わっていった。

 

あれから20年近く経つ。もしまだ上達してなかったら速やかに返納してほしいと思う。