その昔、コールセンターでテレオペの仕事をしていたことがあった。その時の上司についてのエピソード。
クレーマーから電話が入った。理不尽なことで延々と怒り続け、「上のもん出せ」と。あらかたの内容を伝え、課長が電話を代わった。落ち着いた感じで、余裕の笑みを浮かべ「代わるわ〜大丈夫、大丈夫〜」と言った。全く動じてない。さすがベテランの貫禄だ。
はじめ電話に出たオペレーターの子が席を立って、課長に「座ってください」と促したが、「いい。大丈夫。すぐ済むから。」と言って座らなかった。
誰もが、毅然と対応してくれると思っていた。
そして電話を代わった。その瞬間……
「申し訳ございませぇん。申し訳ございませぇん。」
すぐあやまった。即あやまった。めっちゃ理不尽な要求されてるのに。
えぇ えぇ えぇ えぇ えぇ……
えぇ えぇ えぇ えぇ えぇ……
えぇ えぇ えぇ えぇ えぇ……
えぇ えぇ えぇ えぇ えぇ……
えぇ えぇ えぇ えぇ えぇ……
聞いてる方がノイローゼになりそうなくらい、エンドレスで「えぇ」を連呼している。「えぇ」と言う相槌はオペレーター的にあまり良くないと、指導されたことがあったと思うが?
えぇ えぇ えぇ えぇ えぇ。
えぇ えぇ えぇ えぇ えぇ。
「 お許しくださいませぇ」
「 どうか、どうかお許しくださいませぇ」
立って話していたので、疲れたのかひざまづいた状態になっていた。その状態で、「どうかお許しくださいませぇ」と言っている。
その様は、もうドMそのものだった。
「お黙りっ」て言ってやろうかと思った……
クレーマーの電話は、すぐ済むことはなく延々と続いた。「えぇ」と「 お許しくださいませぇ」の連呼でなんとか乗り切って、やっと電話を切ることができたようだ。
切った後、みんなの視線を感じた上司は、口角を上げて無理やり笑顔を作り「もう大丈夫や!」と言って上げた手はプルプルと震えていた。自席に戻って行ったが、その後ろ姿が切なすぎた。
威厳ゼロ。その日から密かにドM課長と呼ばれるようになった。