下ぶくれ日記

中年主婦が書くたわいもないブログです。

【読書】川のほとりに立つ者は

 

 

川のほとりに立つ者は、水底に沈む石の数を知り得ない。

 

読み終わってこのタイトルの意味の深さを噛み締めている。

 

心に深く刺さり、深く考えさせられる物語だった。

 

ADHDディスレクシア(発達性読み書き障害)、毒親との確執、男を嫌い、騙しながらも依存しないと生きていけない女性。生きづらい……そう言う思いを抱えている人がどれほどいることか。表面からはわからない。一方的に判断してはいけない。人の奥底にある痛みや辛さ。みんな多かれ少なかれ抱えてる。それを無理に話す必要もないし、暴く必要もない。

 

【心に残った言葉】

ADHDだということを告白して、「もっと早く言って欲しかった」という店長清瀬に対して従業員の品川さんが言った言葉

 

知ってたら仕方ないよね。普通の人じゃないんだもんねって何でも大目に見てあげた、みたいな話ですか?いるんですよね。発達障害って聞くなりアタフタし出して、配慮するとか理解するとか言ってくる人。

 

でも店長みたいな人たちって、そのこと知ると相手をただの『障害のある人』ってカテゴリでしか見なくなりますよね。もうわたし自身のことを見ようとしなくなる。

 

そうかもしれない。グサグサと刺さった。私も同じだ。以前の職場でADHDの子がいた。辞めてから上の人から聞いて知った。何で伝わらないんだろう。何で話が全然噛み合わないんだろう。何で空気が読めないんだろう。何でそんなこと聞くんだろう。ちょっと考えればわかるのにとか。何で?イライラしてしまって結構きついことも言ったかもしれない。後になってそれを聞かされて、まさに清瀬と同じ「もっと早く教えてくれたらよかったのに」と言った。見た目も普通だし、雑談も普通にするし気づかなかった。いや、ちょっとそんな気があるとは思っていた。でも普通ってなんだ?辞めていった彼女が言わなかったのは品川さんと同じ気持ちだったんだろう。

 

もしかしたらわたしは自分で思っているよりずっと偏見に満ちた人間なのかもしれない

私もだ。自分は何様だ?何も知らないくせに。自分だって普通じゃないところいっぱいあるのに。

 

過去は消えないし、性格はきゅうには変えられない。でもこれからの行動なら変えられる。少なくとも清瀬は変えたいと思った。

私もそうありたいと思う。

 

「その場を乗り切る」を繰り返して生きてる人っていっぱいおるやんか。

これはディスレクシアである「いっちゃん」が言った言葉。自分が読み書きが苦手なことを隠しながら騙し騙し生きてきた。私だってそうかもしれない。苦手なことは極力避けて、どうにかその場だけ乗り切る。それを繰り返す。乗り切れなくなったら辞めたり逃げてきたかもしれない。

 

私は清瀬であり、いっちゃんでもある……

 

胸がぎゅーっと締め付けられて苦しくなるけど、前向きな終わりでよかった。

 

前向きな終わり方の小説が好き。この作者の「今日のハチミツ、あしたの私」も前向きになれる話で好きだった。