中学生の頃の話。
学校の近くの本屋さん。学校の帰り道にしょっちゅう寄ってた。
私はその当時、すぐ赤面するのを悩んでいて、「赤面症は治る」という本を買うか買わまいか迷って本を置いたり取ったりしていた。
その時、視界が真っ暗になった。後ろから誰かに目をふさがれた。
その人は同時に「だーれだ?」と言った。
びっくりした~。誰だろ?この声は?
「白川さん?」「ちがーう」
「山河さん?」「ちがーう」
「しほちゃん?えっ?待ってよ~ さっちゃん?いやっ……あけみちゃんか?」
「あけみちゃんやろっ!」
「え?なんでわからんの?全然違う!」とその人が言った。
「ほんまにわからん。ごめん。誰~?」
その人は、目を覆っていた両手を離してくれた。私は、ずっと目を押さえられてたのでなんか目が変だ。
振り向いた。なんか目がぼやけてるけど……
誰でもなかった。知ってる誰でもなかった。
見たことのない人が半笑いで立っていた。
(同じくらいの背格好ではあるけど……見たこともない)
「え?だれ?」(いや、ほんま誰なん??)
「え?あれっ!だれ?うわっ!ごめんなさい!」
ものすごい形相で逃げるように、その人は本屋を出ていった。
完全な人違いだった。結構な時間、誰か当てようとしてた自分も相当恥ずかしい。
誰かさっきのやりとりを見てたかな?取り残された本屋でまた赤面した。ゆでだこみたいになった。そして私は、なけなしのお小遣いで「赤面症」の本を買って帰った……